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活動ブログ

トルコ共和国シャンルウルファでの第二次発掘調査②

2023年12月08日

調査で滞在したシャンルウルファ市は、今年2月6日に発生した南東トルコ大震災の震源地に近く、その被害を憂慮していました。現地に入ってみるとシャンルウルファ市では他都市に比べてそれほど大きな震災被害はなかったとのこと。それよりも、地震後ひと月たった3月中旬に街を襲った豪雨に伴う洪水で博物館をはじめとして大きな被害が出たそうです。そのため博物館の展示室はまだ一般公開されていませんが、博物館スタッフが再館復興にむけて鋭意努力している様子がうかがえました。

海外での長期調査は、体力勝負とも言えます。円滑な調査の遂行には、十分な食事や睡眠ももちろん重要事項です。特に日中の気温が40度(体感温度は50度以上)を超え、木陰など全くない遺跡での発掘は言語を絶する大変さ。しかも遺跡は車が近寄れない山頂にあって、毎朝、機材をもって遺跡まで徒歩で山登り、たどりつくだけでも息を切らしていました。  去夏は初めての調査だったこともあって、現地との調整がなかなかうまく行きませんでした。午前3時半丑三つ時に目覚ましアラームに叩き起こされ、宿舎から1時間以上かけて日の出とともに遺跡に到着して作業開始、炎暑が最高になる午後2時前にその日の調査を終了し、午後は泥まみれの調査着のまま博物館に直行して夕方まで出土遺物の分類整理、宿舎に帰ってからも夜10時まで調査業務という生活に明け暮れました。ウルファ県知事の懇切なるご推挽もあって決めた滞在先でしたが、その宿舎の食事時間に全く合わない調査日程しか組めなかったため、食事もほぼ外食、しかもケバブなど焼き肉料理ばかり(市内レストランはほぼすべてが焼き肉専門店で選択の余地すらありません)。日夜、胃もたれに苦しみ、次の食事に辟易するほど。あまりの過酷さに耐えかねて、メンバーの数名が体調不良で倒れてしまいました。

現場の朝食 テントがある谷の下まで15分かけて山を下って、自家製のサンドイッチを頬張る コーラが何よりうまい

その苦い経験を克服すべく、今年は街の中心にあるホテルを調査団の貸切にして私たちの様々な要望を聞いてもらったので、かなり快適に滞在することができました。繁華街にもかかわらず伝統的な石造りのホテルは静寂で、博物館のご厚意のおかげで宿舎で可能になった出土遺物の分析調査もはかどりました。食事も懇意のレストランからケイタリングを依頼したところ、ケバブ一辺倒の羊肉地獄とは打って変わって、栄養バランスのとれた食事にうまいうまいと連呼するほど。おかげで参加したメンバーの評判も大きく改善し、宿舎に一緒に滞在したトルコ人の考古学徒とともに和気藹々と楽しく調査を進めることができました(それでも残るいくつかの不平不満は今後の課題ですが)。

2023年の調査団宿舎 ウルファ伝統建築を改築した瀟洒なホテルを貸切にした
ある夕べの食事。家庭料理レストランからケイタリングしたチョルバ(スープ)、木の実ピラフと鶏肉煮込み、サラダ。この献立が今年最高の美味だったそうだ。(撮影:鈴木健太)
古代エデッサ城のお膝元にあるシャンルウルファの名勝地、魚の池公園。朝から晩まで数多くのウルファっ子が集う街一番の憩いの場。神友イブラーヒーム(聖書のアブラハム)が邪悪な王ニムロドの業火から救われたという伝説のある池で、ここの魚は食べてはならない
宿舎からほど近いバザールにはなんでも揃う。毎日のように調査資材を買いに出かける。英語は全く通じないので、トルコ語などの現地語で値段交渉や領収書の発行をお願いしなければならない

来年の発掘調査ではさらに新たな発見を目指して、発掘調査と標本資料の分析を続けていきたいと考えています。

 末筆ながら、現地トルコの研究者や現地博物館の館長以下スタッフの皆さん、発掘に参加してくれた若手研究者たちや村から雇う作業員、滞在先の宿舎で働く従業員から運転手まで、様々な人々に大変お世話になりました。現地の言葉に慣れず意思疎通もままならないなか、現地での調査や生活を支えてくれた皆さんに、いつもながら深く感謝いたします。

 そして今回も、私たちの調査に多大なご協力を惜しまず、現地で次々にわき起こるトラブルの解決にも尽力してくださった大村幸弘先生や師田清子様をはじめとする中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所の皆様に感謝いたします。

(下釜和也)