活動ブログ
トルコ共和国シャトルコ共和国シャンルウルファでの第二次発掘調査①
2023年11月23日
私たち地球学研究センターが主催する発掘調査を実施するため、今夏7月末から10月上旬まで2ヶ月以上、トルコ共和国に滞在してきました。
今から1万2千年前の新石器時代——更新世から完新世へ移り変わる頃、それまで狩猟と採集で細々と暮らしてきた人類に大きな変化が起こり、農耕と牧畜という自ら食料を生産して暮らす生活様式が始まりました。
そうした大きな変化が世界で初めて起こったのが、現在のトルコ共和国の南東部からシリア、イラクなどにまたがるメソポタミアであったと考えられています。
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最近の考古学の成果によれば、とりわけ南東トルコでその変化が著しかったことが明らかになってきました。ギョベックリ・テペ遺跡のような、高さ5メートル以上の石柱や多彩な動物彫刻が出土し、人類最古の神殿とも言われる巨石モニュメントが突如として現れる南東トルコは、それまでの文化や技術とは一線を画する新たな文明が起こった最重要地域として注目を集めています。しかし、なぜそのような巨石建造物がつくられたのか、そもそもそれらを築いた集団はどのような人々だったのか、氷河時代から完新世にかけての地球環境の劇的な変化とどう関わっていたのか、その後の文明とどういう関係にあるのか、など数多くの謎が残されています。
そうした人類と地球環境の共進化の歴史を解明するべく、私たち地球学研究センターは文明、環境、技術、物質をキーワードにトルコ共和国をフィールドにして調査研究を行っています。
私たちはまず、現在のシャンルウルファ市から東へ45キロほど離れたハルベトスワン・テペシ遺跡をターゲットに、去年の夏に予備調査を開始しました。今年はその第2シーズン目にあたります。
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遺跡がぽつんと佇む(写真右下)。朝、南東を望む。
ハルベトスワン・テペシ遺跡は、石灰岩の丘陵の頂上に営まれた先土器新石器時代(今からおよそ1万1千年前)の遺跡です。遺跡の名前は現地アラビア語で「火打ち石の丘」という意味で、100メートル四方ほどの小さな丘に、火打ち石、つまりチャートのような珪質岩(フリントとも呼びます)でつくられた石器がたくさん落ちていることから名付けられました。この遺跡は2017年から2019年にかけてトルコの考古学者が試掘調査を手がけています。その結果、ギョベックリのような一対の石柱をそなえた建築遺構や人物彫刻などが発見されていました。
それを受けて、私たちはこの遺跡のさらなる実態解明と、地球環境の変化との関わりを探る考古学・地球科学的データを収集すべく発掘調査に着手しました。
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時間が足りず、結局、最古層には到達できなかったものの、古代の建築技術に関する知見を多く得ました。また、石器や製粉用の磨り石、ビーズなどの装身具について、それらの考古学的、物質科学的なデータも大量に得ることができました。地中レーダーと磁気を利用した地中探査によって、地中に眠る未発掘の建物の全体像がおぼろげながら見えてきたことも今年の大きな成果です。
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しかし、眼鏡をはずすのを忘れていたメンバー。
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調査成果の詳細は、追って紹介します。また、分析データの解析と研究を進めているところで、その結果は近く論文として発表公開する予定です。
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ひと月もいると真っ黒に日焼けする
②へ続く(近日公開予定)
(下釜和也)