× Close

研究テーマ

物質科学分析グループ

 物質科学分析グループでは遺物史料の化学分析に基づき、「人類はどのようにして製鉄技術を確立したか?」という問いに取り組んでいます。一般的に鉄の精錬は、紀元前17世紀から12世紀にかけて、現在のアナトリア地域(トルコ共和国)に存在していたヒッタイト王国で始まったとされています。この地域の遺跡の発掘調査により、鉄鉱石を加工して作られたと考えられる球状の遺物や、製鉄の際に生じる鉄滓(製鉄スラグ)などが発見されています。また、製鉄技術確立以前の人々は鉄隕石を加工することによって鉄器を製造していたことが知られており、鉄隕石製の遺物が世界各地で発見されています。私たちのグループでは、これらの史料に最先端の分析手法を適用し、物質科学的なアプローチによって当時の人々の鉄の精錬および加工技術の解明を目指しています。

鉄隕石刀

 製鉄技術の確立以前に製造された鉄隕石製の遺物は、古代の鉄の加工技術を知るうえで非常に重要な研究対象となります。私たちのグループでは、博物館などに所蔵されている古代の鉄隕石製刀剣の非破壊・非接触分析により元素濃度・元素分布情報を取得し、その加工技術に関する研究を進めています。また、鍛造などの加工によって鉄隕石の組成がどのように変化するのかを知るために、近現代に製作された鉄隕石製刀剣の分析を行っているほか、鉄隕石から刀剣を製作する加工実験を進めています。

関連ページ

 

アナトリア地域の製鉄遺物

 アナトリア地域の遺跡からは多くの人工物と考えられる鉄遺物や鉄滓が発見されています。これらの遺物史料の中には、原料となった鉄鉱石の特徴を強く残しているものが含まれています。そのため、鉱物組織の観察や地球化学的な分析により、原料として使用された鉄鉱石の種類や産地を推定することが可能になります。鉄滓の鉱物組成は精錬時の加熱プロセスなどを反映しており、これらの史料の分析によって当時の製鉄環境を知ることができます。また、個々の遺物史料に放射性炭素年代測定法を適用するための分析手法の開発を進めています。このような物質科学的分析手法を組み合わせ、アナトリア地域における製鉄技術の変遷を明らかにします。