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研究テーマ

古環境研究グループ(Paleoenvironment Research Group)

中央アナトリアにおける完新世高精度・高解像度年代層序の確立と広域環境変動の復元

 中央アナトリアの完新世における気候変動の概要が近年明らかにされつつありますが、気候・環境指標は定性的なものが多く、季節性にまで踏み込んだデータが少ないという問題があります。また、時代推定精度が低いことも問題です。トルコ中部のNar湖ではおよそ14000年前以降、同じくトルコ中部のEski Acigolでは18000~6000年前の間、年縞を持つ堆積物がほぼ連続的に堆積しており、年単位の超高解像度かつ高時間解像度の年代モデルを確立出来ると期待されます。また、火山灰や火災層、砂塵嵐層などのイベント層を認定出来れば、それらの対比により、高精度の年代推定値を周辺地域の遺跡の文化層や遺跡周辺の湿地堆積物に投影できる可能性があります。しかし、Nar湖やEski Acigolにおけるこれまでの研究は、完全連続な堆積記録の回収や精度の高い年代モデル確立に必ずしも成功していません。また、堆積物からの定量的な環境指標の抽出やそれらの信頼性の評価にも多くの問題が残されています。
 そこで、古環境研究グループでは、Nar湖とEski Acigolにおいて掘削を行って完全連続な堆積記録を回収し、最新の年代推定技術を駆使して堆積物の年代を多くの層準で精度よく推定、年縞を用いて推定年代を内挿することで、18000年前~現在をカバーする超高精度、高解像度年代モデルの確立を目指します。そして、気温・降水量・蒸発量・風系・植生・火災規模と頻度・それらの季節性などの古気候・古環境指標を定量的に復元し、人間圏の形成・発展とその背後にあった環境変動との関係を探ります。

年縞を保存する堆積物(水月湖の例)

遺跡内イベント層序確立と地域的環境変動復元

 遺跡から得られる人類の文明史記録は、考古学的視点で区分、編集された層序記録(文化編年)としてまとめられていますが、その堆積学的視点からの検討は、これまでほとんどなされていません。また、遺跡内の地層(文化層と呼ばれる)から気候や環境に関する情報を取り出す試みも、ほとんどなされてきませんでした。文明史が気候・環境変動に影響されるという考えは、頻繁に提案されていますが、使われる気候・環境変動の記録の多くは、遺跡から数百km以上も離れた地点で得られたもので、必ずしも遺跡における気候・環境を代表しているとは限りません。更に、遺跡から得られた考古記録との年代対比の不確実性という大きな問題もあります。
 そこで、古環境研究グループでは、遺跡内から遺物や遺構を含む堆積記録を連続的に切り出して研磨面や薄片を作成し、考古学的基準に基づく文化層区分と堆積学的基準に基づく地層区分の比較を行います。また、火山灰(層)、火災層、砂塵嵐層などのイベント層を見つけ出し、イベント層序を編むと共に、各イベント層の鉱物、無機化学、有機化学、同位体分析などを行い、イベント層の特徴づけを行います。さらに、遺跡近傍の湿地の掘削を行って、より連続的な堆積記録(コア試料)を回収し、地域的な気候・環境変動を復元し、遺跡内で発見されたイベント層を遺跡周辺の湿地から回収された堆積記録中に探して対比する事により、遺跡内で編まれた文明史と地域的気候変動の関係を高い時間精度で検討します。また、遺跡内や遺跡近傍湿地で見出されたイベント層とNar湖やEski Acigolで認定されたイベント層を対比することにより、高精度・高時間解像度の時間目盛りを遺跡で復元された文明史記録に投影することで、文明史により正確な時間目盛りを入れることを目指します。